珊瑚とはどのようなものを指すのか
宝石というとダイヤやルビーなど火山の高熱によって生み出された鉱石をイメージする人が多いかもしれません。しかし鉱石以外に、宝石の世界で珍重されているのが海の生き物から生み出される副産物になります。海の生き物から生み出される副産物の代表格といえば真珠ですが、珊瑚もまた、独特の美しさから長年多くの人に愛されている宝石です。
珊瑚とは海の中で生きる珊瑚虫のこと
珊瑚とは沖縄やオーストラリアなど温かい海流に住む刺胞(しほう)動物です。動かないため植物と思われていることも多いのですが、実際には動物の一種に分類されます。
しかし二酸化炭素を吸収して酸素を排出する働きをするため、植物に近い一面があるともいえるでしょう。海の掃除屋と呼ばれることもあります。珊瑚は全身から細い触手を出して海に漂うプランクトンを海水ごと捕まえて捕食して生きています。
珊瑚が体内で宝石を作り出す
動物と植物の生態を持つ珊瑚が、なぜ宝石の世界で珍重されるのかというと体内できれいな石を生み出すからです。先に言ったとおりに珊瑚はプランクトンを捕食することで栄養を得るのですが、捕食の際には砂を含めた異物も取り込んでしまいます。
異物をそのままにしておくと害を及ぼすことが分かっているので、その異物が害を及ぼす前に対処しようとするのです。その対処法というのが、自身の体内で作りだした炭酸カルシウムやマグネシウムを使って異物を包み込むことです。この炭酸カルシウムとマグネシウムが蓄積し、美しい宝石が作られていきます。
希少価値があるのは簡単に手に入らないから
宝石としての珊瑚は、珊瑚のもつ防衛本能によって生み出されるものです。そんな珊瑚が生み出す宝石はなぜファッションや買取の世界で希少価値があるのかというと、簡単に言えば宝石の中でも入手難易度が高いからです。
そもそも宝石として採取できるのは、モモイロサンゴとアカサンゴとシロサンゴそしてベニサンゴの種類だけ。珊瑚は温暖で栄養となるプランクトンが豊富であり、海水の汚染度が低い海でしか生きられません。
さらに宝石として採取できるのは1年や2年ではなく、珊瑚の寿命が尽き始める10年以上たって初めて採取できるため「数が取れない」ことが理由となります。そのうえ天然自然の産物なのため、最初から形と大きさが適しているものはそのまま使われますが、体内から排出されるものの多くが大きさや形にばらつきがあります。大きさが基準値に満たしていないものは、残念ながら廃棄されます。
そして大きさはあっても形がいびつのものは、研磨をして形にするため、製品として市場に出回るまでに非常に手間がかかるのです。これらの選別と加工を経て初めて店頭に並べられることで、小さいものでも平均価格として1万円から大きいものになると100万円以上をする高級宝石になります。
価値の高い珊瑚は純粋な赤色もしくは白と赤色が混じったマーブル模様のものが多くなります。これはニンジンやサツマイモに含まれている色素であるカロチンが含まれているからであり、光沢のあるきれいな赤色が魅力です。その見た目からエンジェルスキンと呼ばれています。
珊瑚を含めて海で収穫される宝石の価値が高いのは、すぐに収穫できるというわけではないからです。最初は砂粒ほどの大きさであったものが、膨大な時間を積み重ねることできれいな光沢を生みます。そんな珊瑚の宝石は年々価格が上昇傾向にあります。
その背景にあるのが海洋汚染やプラスチックごみといった環境破壊であり、きれいな海でしか生きられない珊瑚の数が年々減っているためです。人気の宝石である珊瑚は、海の環境を守るうえで大事な生き物でもあります。今後も安定して収穫するためにも、環境対策が急がれています。